| 命令法(imperative mood)とは法(mood)の一種で,命令文(imperative sentense)は文の形式の呼び方ですが,両者の関係がよくわかりません。また他に命令(command)もありますが(統御ではなく),両者と全く別な次元の話なのですか。また命令表現と言う言葉もききますがこれははどこの話なのですか。もともと不思議に思っていたところに上?下?のスレを拝見したもので,1度皆さん方にお尋ねしたいと思いスレをたてました。
chaispeedさんへ, かってに人の話に割り込んだ上にご了承もなくスレをたてて申し訳ありません。参加する以前の議論ということでお許しください。 参考書の中には「現代の英語では, 命令法はとくに「法」と呼ぶほどの必要はないくらいで,動詞の原形の一用法と考えておいても十分である。~」(英文法詳解[杉山忠一])との記述もみかけました。 そこで以下の質問です。 ①命令法というという分類の仕方で説明する方法はいつ頃から始まったのですか。そして,命令法で説明する文にはどのようなものが入るのですか。 ②命令文というという分類の仕方で説明する方法はいつ頃から始まったのですか。命令文で説明する文にはどのようなものが入るのですか。 ③①②のズレはあるのでしょうか。またcommandという用語は①②の立場でも使う用語なのでしょうか。 ④アメリカやイギリスの学校のテキストは法として説明するのかそれとの文と説明するのが一般的なのでしょうか。 ⑤少し本題とズレますが,直接法(indicative mood)という言葉は命令法や仮定法(subjunctive mood)との対比以外で頻繁に使われる用語なのですか。特に,時制について説明する場合にはその理解の前提として通例教わる話なのか。 以上が私の疑問点です。英語史や法に詳しい方,学生時代に教わった方(学年や期間は気にしておりません),参考書等の目次の組み立て方に理解のある方,よろしければ1つでもかまいませんから教えて下さい。また,上記のことが詳しく書かれている参考書,論文等ご存知の方もよろしくお願いいたします。 |
Re^1: 命令法と命令文
2008-02-12 23:16英語などで、命令法 ("imperative mood") などの法 ("mood") という場合は、動詞の活用形と、その活用形が意味するところを指すと思います。
命令法を含めた「法」は、英語が誕生するよりもはるかに昔に、印欧祖語 ("Proto-Indo-European Language") で、既に存在していたと言われているそうです。
印欧祖語は、今から約5000年前の言語と言われているようですが、現在の英語やその他の多く言語の起源となった言語で、現在、世界の人口の約半数は、印欧祖語から派生した言語を母国語または日常的に使用する言語にしているそうです。
印欧祖語が使用されていたときに、まだ文字がなかったため、それから派生した古代言語などから、どのようなものか推測しているそうですが、印欧祖語の法に関しては、少なくても "indicative" (直接法)、"imperative" (命令法)、"subjunctive" (仮定法/接続法)、"optative" (希求法) が存在し、そして "injunctive" (指令法) も存在していた可能性もあるそうです。
そして、印欧祖語でも、現在あるそれから派生した多くの言語と同様に、動詞は、主語の人称/数、時制 (狭義の意味で)、法、態によって活用 (変化) したそうです。派生した言語によっては、助動詞を使うようになったり、活用のパターンが単純化され、同じ形が異なる主語の人称/数や法などに使われるようになったようです。特に英語は、単純化が進んだ言語のようです。
現に、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語などでも、命令法の活用形 (言語によって、主語の種類が多少異なりますが、二人称単数、二人称複数、二人称の丁寧、一人称複数などに対する) は、原形 (不定詞) と異なった形になっています (それらの動詞の活用表などを見れば、載っています)。そのため、そのような言語では、動詞の活用形からでも「命令法」という概念は意味があると思います。
現在の英語では、命令法の活用形や、二人称などの直接法現在の活用形などは、原形と同じになっていますが、古英語では、強動詞 ("strong verb") では、二人称単数と二人称複数の命令法の活用形は、原形とは異なっていたようです。(弱動詞 ("weak verb") では、二人称単数の命令法の活用形は、原形と同じであったようです。二人称複数の命令法の活用形は、原形と異なっていたようです。) (強動詞、弱動詞とも、二人称複数の命令法と、全人称の複数の直接法現在形の活用形は同じであったようです。)
一方、文法というものは、古代ギリシャでは存在していた学問で、哲学者などの間で論理や修辞法の議論が行われていたそうです。多分、そのころに、命令法などの法という概念があったと思います。それが、ローマに伝わり、ラテン語の文法が体系化されたそうです。
そして、英語の文法は、知られている限りでは16世紀後半に登場し、最初は英語も、ラテン語と同様に体系できることを証明するのが目的であったそうです。そのため、英語の文法は、ラテン語の文法を基に、体系化されたそうです。そのため、英語の「命令法」という概念も、英文法というもの登場したときに、最初から既にあったと思います。
英語の命令法の動詞の形が、原形と同じであることは、英語の活用形が単純化した結果だけであると思います。活用形が単純化したからといって、動詞の活用形の一つである「命令法」という概念がなくなったわけではないと思います。
それは、英語の「仮定法現在形」でも同じであると思います。
> 参考書の中には「現代の英語では, 命令法はとくに「法」と呼ぶほどの必要
> はないくらいで,動詞の原形の一用法と考えておいても十分である。~」(英
> 文法詳解[杉山忠一])との記述もみかけました。
現在の英語だけを見れば、そのように考えることは間違いではないと思います。
ただ、「動詞の原形の一用法」などと考え、文法を体系化することが、本当に意味があり、わかりやすいかどうか、私は疑問と思います。
そのような体系化をすると、「動詞の原形の用法」には、命令、be-動詞を除き三人称単数を除く現在、仮定1 (提案や要求などを表す)、一部の動詞 (「知覚動詞」や一部の「使役動詞」) で、"to" なしで、補語の役割をする、などに使用と分類し、「動詞に '-s'/'-es' などを付ける」用法には、三人称単数の現在、「動詞の過去形の用法」には、過去、仮定2 (非現実的) (ただ、一人称と三人称には be-動詞の場合は "were" を用いる) などに使用と分類することになると思います。さらに「分詞」(「-ing 分詞、-ed 分詞」)については、それぞれ、助動詞と用いられた場合、名詞を前から/後ろから修飾する場合、副詞のように使用する場合など、で分類することになると思います。
英語というものをよく知らない人が、異なる用法を、動詞の活用形が同じというだけで、一度に見せられて、それらをイメージし、掴むことができるかどうかであると思います。
ところで、「命令文」は文の種類を言っています。「文」をどのような考え方に基づいて分類するかにもよると思いますが、一般的には、「平叙文」、「疑問文」、「命令文」、「感嘆文」などと分類されていると思います。
「命令文」は、主節の動詞に命令法の動詞を用いた文であるといえると思います。
英語などの参考書などで、"command" などという場合は、一般的に「命令表現」を言及していると思います。命令文、その他、法助動詞や準助動詞 ("will", "must", "can", "be going to", "have to" など) を用いた平叙文が、文脈や状況などによって、命令表現を行うことができるといえると思います。
一般的に、文の種類をいう場合は、文法形式的に文の形をいい、「表現」という場合は、その文が実際に発せられると何を意味するか (または、何を伝えるために発せられるか) をいうと思います。例えば、上述のように、文の種類は「平叙文」で、それが「命令表現」になる場合もあれば、文の種類は「疑問文」でも、意味することは断言で、何かを強調する表現 (「修辞疑問文」) の場合もあります。
英語で、ただ、命令を発するにはどのような表現をするかを教えるのであれば、ただ、通常は主語なしに、動詞の原形を用いるなどのような説明でも、十分かもしれません。
しかし、上述したように「法」という概念は、意味があると思います。通常は、事実 (発言者が事実であると思っていること) は、動詞を、事実を言い表すための形にして、文/節で用い、それを「直接法」と呼ぶ (現在の英語では、「直接法」が常に事実を表すとは限りませんが)。それに対して、事実ではないことは、事実と区別するために、「直接法」とは異なる形にして、文/節で用い、「命令」の場合は「命令法」の動詞の形にし、提案や要求などは「仮定法現在」の動詞の形にし、「非現実的なこと」や「事実に反すること」は、それぞれ、そのようなことを言い表すための動詞の形 (活用と助動詞の使用) で表すという、動詞の活用の概念を理解することは意味があると思います。現在の英語では、「命令法」と「仮定法現在」では、原形と同じ活用になるだけということと思います。
逆に、「命令法」という概念を否定すると、英語の命令文で用いられている動詞は、何と理解するかというような問題が生じると思います。例えば、極端なことを言えば、まさか、英語の動詞の原形には、元々命令の意味が含まれているので、原形で用いると命令の意味になるなどと、全く根拠がないでたらめな説明もできないと思います。
そのような動詞の使用法は、上述したように、約5000年前の、英語などの基になる言語で存在していたと推定されていることや、古代ギリシャや古代ローマで、そのような動詞の使用法は、既に文法の中で概念化されていたと言われていることであり、そのような使用法は、現在、世界の約半分の人が母国語または日常的に使用する言語としているところの、印欧祖語から派生した言語で、多分多かれ少なかれ見られることを鑑みると、現在の英語で、その特徴が薄れていたり、消えているというだけの理由で、無視したり、否定したりできるものではないと思います。
結局、「法」などという概念を理解することと、英語でも、動詞については、辞典の載っている原形のままで使用されるわけではなく、実際に使用する場合には、主語、時制、法、態などに応じて、活用したり、助動詞と組み合わせて使用されるものであり、文/節の中で、動詞はそのような情報を伝えるという役割をしているなどという概念を理解することは、言語のある側面を知る上では、意味があると思います。
Re^2: 命令法と命令文
2008-02-13 22:01ご丁寧かつ詳細な回答まことにありがとうございました。感謝です。
毎度毎度お願いばかりで申し訳ないのですが,英語史に関してMKさんが教えてくださったような内容について詳しい説明のある本があれば教えていただけないでしょうか。英語史の本はベイシック英語史のような比較的薄い本は3冊ほど読んだことはあるのですが,MKさんの説明ほど詳しく書かれたものは読んだことがありません。じっくり勉強してみたいと思うのですが,比較的入手しやすいものがあればよろしくお願いいたします。
Re^3: 命令法と命令文
2008-02-14 23:12私は、英語史だけを取り扱った本は、読んだことがありません。
英語史については、主に、"Oxford English Grammar" by Sidney Greenbaum (ISBN: 0-19-861250-8) というネイティヴ向けに書いようなことを称している英語の文法書の 1.2、8.2 ~ 8.12、12.1 などのところどころで読みました。その本のタイトルからして、文法が中心ですが、英語の歴史についても、触れているところがありました。
その他の英語圏で出版されている英語の文法書では、序文や最初の章で英語史について、数ページに渡って書かれているものがあり、そのようなところで知りました。
以前、英語史について、英語圏で出版された有名な本があるかどうか、捜しましたが、昔に出版されて絶版になっているものが多く、出版中のものでも、どれが良いかわからないところがありました。絶版になったものでは、100年以上前に出版された "A Brief History of the English Language and Literature", by J. M. D. Meiklejohn, M.A. という本が、比較的有名であったそうです。その本は多分著作権が切れたのか、インタネットで、ダウンロードできるサイトがありました。そのタイトルで検索すると見つかると思います。
Re^4: 命令法と命令文
2008-02-15 22:56回答ありがとうございました。
上記の本を探してみたいと思います。